本研究の目的は老化と皮膚のメチル化との関係を調べることである。平成13年度はメチル化の解析に関して存在していた技術上の問題を、実験手法の改良により改善することに成功している。 平成14年度にはメチル化の解析を開始する予定であったが、健常者サンプルの収集が未だ不十分であった。一方、本講座で行われている、モザイク様の色素斑、脱色素斑を形成する疾患である遺伝性対側性色素異常症(Dyschromatosis Symmetrica Hereditaria以下DSHと略。)の研究及び、近年発表されたモザイクとDNAメチル化の研究から、DSHの発症に老化とメチル化が関与するのではないかとの発想に至った。また皮膚におけるモザイク構造の解明をしないまま、漫然と皮膚全体におけるメチル化を調べることでは、加齢現象を明らかにはできないのではないかと考えた。そこで平成14年度は、加齢によりモザイク状に現れる色素斑、脱色素斑とDNAメチル化に関して明らかにする前段階として、DSHの原因遺伝子の発見を目的とした研究をおこなった。具体的にはDSH原因遺伝子の発見のため、DSH候補領域内に存在しDSHの原因と考えられそうな遺伝子配列を、Beckman社のDTCS kitと同社のCEQ2000XL Genetic Analyzerを用いてダイレクトシーケンスを行い、変異及びSNPに関して調べた。また、DSH候補領域内の既知SNPに関しては、ABI杜のHuman Assays-on-Demand^<TM> SNP Genotyping Productsと、同社のABI PRISM【○!R】 7700 Sequence Detection Systemを用い、判定を行った。その結果変異こそ見つからなかったものの、SNPとこれまで調べられたハプロタイプ及び家系のデータを統合することで、約800kbであったDSH原因遺伝子の候補領域を約350kbに縮めることができた。
|