半定量的RT-PCRの結果、アンドロゲンレセプターコアクティベーターARA55はアンドロゲンに感受性のある男性型脱毛部や髭の毛乳頭細胞で高い発現が見られ、アンドロゲンに感受性のない非脱毛後頭部の毛乳頭細胞ではその発現は低かった。毛乳頭細胞の内因性ARA55のコアクティベーター活性についてドミナントネガティブARA55を用いたレポータアッセイを行ったところ、アンドロゲンに感受性のある男性型脱毛部や髭の毛乳頭細胞で高い内因性ARA55の活性が見られ、アンドロゲンに感受性のない非脱毛後頭部の毛乳頭細胞では内因性ARA55の活性は低かった。以上よりその発現量と活性によって毛包の部位によるアンドロゲン感受性を調節していると考えられた.アンドロゲンによって髭は成長を促されるに対し前頭脱毛部では毛髪の退縮を誘導するというパラドックスを説明することはできないものの、男性型脱毛の治療においては毛包のアンドロゲン感受性を抑制することもひとつの方法と推測され、アンドロゲンレセプターコアクティベーターはそのよいターゲットとなると考えられる。また部毛乳頭細胞とケラチノサイトの共培養系を用いて前頭脱毛部毛乳頭細胞では部位特異的にアンドロゲンによってTGF-β1が誘導され、毛包の退縮へ向かうことを示した。Hic-5/ARA55の発現量はTGF-β1によって増加するので、これらが複雑に機能して男性型脱毛が進んでいくと考えられた。
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