研究概要 |
自然界に多く存在するflavonoidsの、多岐にわたる働きの解明を目的とし、研究をすすめている。抗炎症作用については既に報告しているが、とりわけ、その生体内酵素阻害作用に注目した。我々は以前よりマウスを用いた紫外線発癌の研究を行い成果について報告してきた。その活性が発癌に関与していることが示唆されているStat3について、紫外線照射とその活性について研究を行った。細胞はヒトケラチノサイト、そのtransformed type HaCaTを用いた。UVB50mJ/cm2において転写因子であるAP-1、Stat3の活性が誘導された。特にStat3の活性は紫外線照射30分後と他の転写因子に比較し早い時期に核への移行が見られ、紫外線によるストレスシグナル伝達の第一歩をになう可能性が考えられた。さらにその上流域である、タイロシンキナーゼ活性が15分後に生じていることが判明した。Flavonoidsのgenisteinやtaxifolinはこれらの活性を量依存的に抑制した。転写因子STAT3は、その恒常的な活性化が有棘細胞癌の不死化において重要な役割を担っていることが報告され、STAT3の活性抑制が癌細胞の増殖抑制につながると考えられる。我々は、皮膚有棘細胞癌及びヒト有棘細胞癌の細胞系列、HSC1,2,4の核抽出液中におけるSTAT3の活性をEMSAを用いて検討した結果、皮膚有棘細胞癌組織では4例中3例で、HSC1,2,4細胞系列では全例においてSTAT3の恒常的活性が見られた。正常皮膚や正常ケラチノサイトでは活性は見られなかった。これらのStat3活性にたいしても、genisteinとtaxifolinは抑制効果を示した。さらに、genisteinとtaxifolinによる前処置はHSC1の細胞増殖を量依存的に抑制し、アポトーシスを生じさせた。以上の知見より、これらのflavonoidsが抗炎症作用のみならず、抗癌作用も有する可能性が示唆された。
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