様々な外的刺激より生じる炎症反応の発生過程において、活性酸素の関与が強く示唆されており、抗活性酸素剤が新たな抗炎症剤となりうることが予測されてきた。今回、我々は、野菜、果物などの自然食品に多く含まれるflavonoidsの一種であるtaxifolinを用いてその抗炎症効果について、培養角化細胞、リンパ球を用いた細胞接着モデルの実験系を使用し、検討した。その結果、taxifolinはin vitroにおいて低濃度においてもリンパ球と角化細胞の接着を阻害し、その作用は接着因子であるICAM-1の発現抑制によることが判明した。Taxifolinは量依存的に角化細胞におけるICAM-1の発現を抑制し、その有効濃度は特定の食物を摂取することなどで充分達成可能な濃度であることがわかった。さらに、ICAM-1の発現抑制経路の検討を詳細に行ったところ、ICAM-1はmRNAのレベルで発現抑制が生じており、転写活性における阻害が考えられた。ICAM-1の有力な転写因子であるStatlの活性の低下がtaxifolinにより誘導されていることが見つかり発表した。細胞内転写因子であるStat1の活性低下がなぜ生じるのかをさらに検討したところ、IFNγにより誘導される刺激は細胞膜の近くに存在するチロシンキナーゼを介して伝わっており、その中のJak1の活性阻害がtaxifolinにより生ずることでIFNγのICAM-1へのシグナル伝達の抑制がおこっていることを発見し報告した。さらにアトピー性皮膚炎モデルマウスを用いてin vivoにおけるtaxifolinの外用剤を作製し、その効果を検討する計画が進行中である。
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