研究課題
奨励研究(A)
我々は乾癬病変部表皮で異常発現し、その病態形成に関わると考えられる種々の増殖・分化関連遺伝子群において、乾癬発症に関わる個々の重要性の違いを評価するシステムの確立を試みた.本研究期間内に我々が行い得たことは以下の通りである:1)まず手掛かりとして、乾癬皮疹部において過剰発現している表皮増殖因子受容体epidermal growth factor receptor(EGFR)に着目して解析を行った結果、本邦の乾癬患者におけるEGFR遺伝子のエクソン(タンパク発現領域)およびプロモーター(転写調節領域)内には、わずかな遺伝子多型を除いて明らかな変異は認められなかった.しかしながら、2)ある特定の遺伝子転写調節領域に、健常人と比較してDNAメチル化の変異が頻発していた(脱メチル化).3)この部位は転写因子AP-2の結合部位とホモロジーが高く、in vitroのDNA結合実験より、DNAメチル化依存的にAP-2の特異的な結合が阻害された.4)免疫染色法により転写因子AP-2は健常人表皮では基底層のみ、乾癬病変部表皮においては基底層から有棘層上層まで過剰発現していた.以上より、少なくともEGFRプロモーター領域におけるDNAメチル化の異常が、転写因子AP-2を介して乾癬病変部におけるEGFRの過剰発現と表皮角化細胞の増殖亢進に何らかの影響を及ぼしていることが考えられた.現在、AP-2の3つの異なるアイソフォームによる独立した遺伝子発現調節機構、およびそれらの皮膚における発現分布の違いについて、さらにDNAメチル化に及ぼす転写因子側からの影響も検討中である.
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)