研究概要 |
好酸球の浸潤にかかわることが明らかとなっているCCケモカインであるeotaxinが,アトピー性皮膚炎の病変部にどの程度発現しているかを明らかにすることを目的として,ダニ抗原誘発皮疹におけるeotaxinの発現を経時的に検討した.ダニ抗原パッチテストによって誘発される皮疹はアトピー性皮膚炎の湿疹反応のモデルとして非常に有用とされている.パッチテスト2時間後よりeotaxinの発現が見られ,6時間後,12時間後にピークとなった.好酸球浸潤は6時間後より目立ち始め,24時間後にピークとなるため,eotaxinがアトピー性皮膚炎の好酸球浸潤に重要な役割を果たしている可能性が示唆された. また,好酸球の分化増殖に重要なIL-5は,それを産生するTh2細胞が鍵を握っているが,このTh2細胞の浸潤に重要とされるケモカインであるTARCが,アトピー性皮膚炎患者の血清中で高濃度に存在すること,それは病変部表皮細胞である程度産生されていることを示した.さらに,そのリガンドであるTh2細胞表面に発現しているCCR4もアトピー性皮膚炎患者の末梢血CD4 T細胞表面に高率に発現するだけでなく,病変部の浸潤細胞上にも高率に発現していることを示した.血清中のTARC濃度はアトピー性皮膚炎の重症度と相関し,末梢血CD4 T細胞上のCCR4発現もその重症度と相関していた。さらに,CCR4の発現率はステロイド外用剤を主体とする治療によって低下する傾句を示した。以上のことは,アトピー性皮膚炎の根本的な病態に,これらのケモカインとそのレセプターが関与していることを示しており,さらなる研究と解析がアトピー性皮膚炎の将来的な治療戦略上必要であると考えられた.
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