本研究は、遺伝性対側性色素異常症の特徴のひとつである「皮疹が末端のみに生じる」点に注目して、皮疹の分布が異なる類似疾患である遺伝性汎発性色素異常症との差異を見ることにより候補遺伝子の推定をひとつの目的としていた。残念ながら今回は遺伝性汎発性色素異常症は非常にまれな疾患であるため、協力が得られる症例をこれまでに得られることができなかった。しかし、今後、検体が得られた時には本研究を開始する予定である。なお、本研究を行う際には、協力していただく患者に対して研究の内容を口頭ならびに文書にて説明し、同意を得た際には同意書に署名をもらうことにしており、また、プライバシーを守るため、実験中は検体に記号・番号を付けて扱うこととし、個人を容易に特定できないように気をつける予定である。 現在、本疾患の原因遺伝子を明らかにする目的でポジショナルクローニングを継続して行っている。ポジショナルクローニングの第一段階である連鎖解析は疾患の家系図をもとに遺伝学的にゲノム上の原因遺伝子の位置を推測する方法であるため、正確な家系図の作成、つまり正確な診断を行うことは大変重要である。本疾患では、現在まで明かな検査値異常ならびに皮膚病理学的所見は成書や論文をあたっても見つかっておらず、診断は特徴的な皮疹の視診のみに頼っている。そのため、皮疹の不明瞭な患者では診断に苦慮する場合がある。そのため、現在、診断の際の簡便な補助的方法としてブラックライト照射を試みている。これまでに可視光下では皮疹が明かでない4症例についてブラックライトを照射、皮疹がはっきりと認識しやすくなることが分かった。さらに可視光と近紫外光(ブラックライトによる光)下での皮疹の画像解析を行い中間色の部分の色調が増強して皮疹が明らかになることが分かった。
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