培養外毛根鞘細胞シートによる植皮の臨床応用に向けて基礎的な検討を症例数を増やし行った。すなわち、年齢、性、毛包抜去部位、培養方法に関して比較検討を行った。対象は7歳から83歳までの男性11名、9歳から81歳までの女性12名で、頭皮から抜毛後に外毛根鞘細胞の培養を行った。培養方法は4種類のexplant cultureを施行した。培養条件として抜去毛包を(1)静置するのみ、(2)酵素処理のみ、(3)カバーグラス固定のみ、(4)酵素処理後カバーグラス固定の4条件で培養を施行した。その結果(1)および(2)の方法では毛嚢が浮遊し培養には不適と考えた。(3)、(4)の方法では培養の成功率に差はなくほとんどの症例で培養可能であった。また、毛包をカバーグラスにて固定することにより外毛根鞘細胞は付着増殖し、培養皿のcollagen coatは不要であった。年齢、性、毛包抜去部位による培養成功率に有意差はみられなかった。また、重層化と3次元培養による角質形成能について培養表皮細胞との比較も行ったが、いずれも差を認めなかった。 以上より、我々が確立した外毛根鞘細胞培養法は、単に抜去毛嚢をnon-coatingの培養皿に静置後、カバーグラスにて固定し、10% fetal calf serumを含むDulbecco's Modified Eagle Medium10% FCS/DMEM)にて培養し、コロニーがみられたら低Ca培地に交換し、細胞が増えconfluentに達したら10%FCS/DMEMに再び交換し重層化するという極めて単純なものである。 培養自己外毛根鞘細胞の長所は何度でも患者から細胞が採取できること、皮膚に傷を残さないことである、今回の検討で年齢、性、毛嚢抜去部位にも影響されないことが判明し、また、酵素処理、培養皿のcollagen coatも不要で、創傷被覆への臨床応用が大いに期待できるものと考えた。
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