研究概要 |
心筋動態ファントムを作製した. このファントムは, 拡張末期容積が143mL, 収縮末期容積が107mL, 駆出率が25%であった. これにTc-99mを封入して心電図同期SPECT(シングルフォトンエミッションCT)を撮像した. そして心筋部の輪郭をトレースするアルゴリズムを2種類使用して, 心室容積と駆出率を算出した. ひとつは統計的1次モーメント法であった. この方法は, 心内膜から心外膜へのカウントプロファイルカーブを引き, そのカーブにおいての1次モーメントを心筋の中央面とした. またカーブの2次モーメントを心筋厚と仮定した. 心基部の設定は, 心尖部を頂点とし135度開いた範囲を心筋として, その境界とした. もう一つのアルゴリズムはガウス関数近似法であった. この方法では心内膜から心外膜へのカウントプロファイルカーブをガウス関数で近似し, 関数のパラメータである標準偏差を求めた. そしてその標準偏差の65%にあたる長さを心筋中央から心筋膜への距離とした. 心基部の設定は, SPECT心筋部分の最大値に対しての25%を閾値として心基部の境界を抽出した. 撮像は3回施行した. アルゴリズムで測定した結果は, 統計的1次モーメント法においては, 拡張末期容積が110±8mL, 収縮末期容積が86±8mL, 駆出率が23±3%であった. ガウス関数近似法においては, 112±2mL, 収縮末期容積が93±4mL, 駆出率が17±2%であった. 両アルゴリズムとも同程度の精度で容積と駆出率を算出することができた. 統計的1次モーメント法において3回測定における標準偏差が若干大きかった主な原因は, 心基部の設定にあった. 心筋部の範囲が僅かにずれても, 心尖部から135度というのでは心基部の設定というのは再現性に乏しかった. そのため統計的1次モーメント法においては, 心筋部の範囲の設定が重要な要因であった.
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