固形腫瘍において、低酸素状態にある細胞は放射線感受性が低く治癒可能性を低下させると考えられている。新規低酸素細胞マーカーであるβ-D-IAZGP (Fox Chase Cancer Center Dr.Chapmanらのグループにより開発されたものであり、Dr.Chapmanより供与)を用いて担癌マウスにおける腫瘍内低酸素細胞分画の定量を行い酸素分圧測定の結果や放射線感受性との関連について検討した。 【β-D-IAZGPの生体内動態】放射性ヨード(^<123>I)で標識したβ-D-IAZGPを腫瘍を移植したマウスに経静脈的に投与し経時的にγカメラで撮影した。マウスは5週齢のC3H/Heマウス雄を用い、腫瘍はマウス乳癌細胞を使用した。マーカー投与後、2時間から10時間で腎、肝、腸管からの排泄像がみられ、24時間後では相対的に腫瘍への高度な集積像が認められた。【β-D-IAZGPのマウス体内分布】担癌マウスに^<123>Iで標識したβ-D-IAZGPを経静脈的に投与し24時間後の臓器内、腫瘍内の分布をγカウンターを用いて計測した。単位重量器と同重量の血液との計数比(Organ-Blood Ratio)を求めた。正常臓器と比し、腫瘍で高い値が認められた。 【腫瘍内酸素分圧および低酸素細胞分画】腫瘍の発育の種々の段階で、酸素分圧測定装置を用いて腫瘍内酸素分圧を測定した。また、^<123>Iで標識したβ-D-IAZGPを経静脈的に投与し24時間後の腫瘍内の分布をγカウンターを用いて計測した。腫瘍重量の増加に伴い酸素分圧の低下がみられ、腫瘍の重量とTumor-Blood Ratioには正の相関が認められた。このことからβ-D-IAZGPの低酸素細胞マーカーとしての有用性が示唆された。 【腫瘍重量と放射線感受性】発育段階の異なるマウス移植腫瘍を照射した後に腫瘍を摘出し単細胞に分離してClonogenic assayを行った。腫瘍容積の増加に伴い放射線照射後の生残率は有意に増加しており、放射線抵抗性であることが示唆された。 これらのことからβ-D-IAZGPの生体投与により腫瘍の放射線感受性を非侵襲的に予測できる可能性が示唆された。
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