本研究の目的は、特に代謝性疾患に注目して、心筋循環動態をMRIで定量的に評価することである。定量解析においてはデータ精度を高めることが欠かせない。心臓MRIのデータ処理精度に関わる因子を評価するために、cfgretシークエンスを使用してスライス厚と算出される左室容積指標との関係を検討した。通常行われる10mm厚の連続スライスを用いた撮像と5mm厚・5mm間隔のスライスを用いた撮像を、健常志願者で行った。10mmスライス像の画質が低い場合、5mmスライス像は信号雑音比の低下のためにさらに画質が低下した。10mmスライス像の画質が高い場合には、5mmスライス像では乳頭筋と左室壁との分離が良好で、データ処理が容易になる傾向がみられた。全体として、算出される拡張末期左室容積、収縮末期左室容積、左室駆出率は同等で、観察者内再現性、観察者間再現性も同等であった。この結果から、統計、精度の高いシークエンスであれば薄いスライスを用いることで定量解析結果の信頼性を向上させることが可能なことが示唆された。 心perfusion MRIではコイルからの距離の違いのために感度が変わり、信号強度に違いを生じる可能性がある。患者データおよびファントム実験で、後中隔の信号低下が示された。しかしながら、contrast ratioを用いた解析では、造影前信号強度による除算が感度補正の効果をもち、支配冠動脈に閉塞性病変のない心筋の間ではcontrast ratioやこれに基づくupslope indexには有意の違いを生じなかった。 びまん性微小循環障害の指標として造影後早期の心内膜/心外膜比を用いるため、同指標の正常値を決定した。支配冠動脈に閉塞性病変のない心筋の安静時では、心内膜/心外膜比はほぼ1に等しかった。
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