当院第一外科の臨床症例において初年度からさらに追加症例数を増やし、遅延性FDG取り込みとグルコース促進拡散膜タンパク質発現・グルコースリン酸化酵素の活性化等の関係をさらに検討し、FDG-PETを用いたグルコースリン酸化酵素活性の予測法の考察を行った。本年度は悪性腫瘍として膵臓癌(腺癌)と食道癌(扁平上皮癌)を用いた。膵臓癌では、術前検査目的にてFDG-PET検査依頼のあった膵臓癌症例に対し、FDG-PETを行い、早期及び遅延性FDG取り込みの計測を行い、これら症例のうち、術後腫瘍の組織標本の得られたものを対象症例とした。食道癌では術前検査目的にてFDG-PET検査依頼のあった食道癌症例に対し、FDG-PETを行い、早期及び遅延性FDG取り込みの計測を行い、予後を経過観察した。FDG取り込みの計測はFDG投与後1時間での取り込み(A)と2時間後取り込み値(B)の2点観測を行い、遅延性FDG取り込みとして体内のFDG集積の時間的上昇をretention index=((B-A)/Ax100)のように計算した。術後腫瘍組織は前年度の報告のようにグルコースリン酸化酵素タンパク(HK)、グルコース促進拡散膜タンパク(GLUT)の発現等を検討した。これらの免疫組織染色での発現とA値及びretention indexの大小をコンピュータ上にて応用統計解析ソフトを用いて比較検討した結果、1/GLUT発現の程度はFDG投与後1時間での取り込み(A)に関係しており、こちらは従来の研究結果の通りであった。が、遅延性FDG取り込みretention indexとは関連はうすい事が判った。 2/HK発現の程度は遅延性FDG取り込みretention indexと有意な関連を示しており、retention indexの計測により腫瘍組織内のグルコースリン酸化酵素の活性化が予測できることが判った。が、FDG投与後1時間での取り込み(A)との関連はうすい事が判った。 3/さらに遅延性FDG取り込みretention indexは予後と有意な関連を示しており、retention indexの計測により膵臓癌(腺癌)の予後が予測できることが判った。(この結果により平成14年度の日本核医学会賞を受賞した。) 4/異なる病理組織学的特徴を持つ食道癌(扁平上皮癌)を用いた検討では、retention indexはやや低い傾向にあり、FDG投与後1時間での取り込み(A)は高い傾向にあったが、予後との関連は認めなかった。
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