【動物実験】家兎臓器(肝、腎、及び大腿)及び各臓器VX2腫瘍に対して新しい塞栓物質・高吸水性ポリマー(200-300μm)の塞栓効果の検証を行った。血管造影上、各臓器及び腫瘍の血管は本材料にて末梢より順次塞栓され良好な血流低下を得た。組織学的塞栓形態として、粒子径相当血管に到達後、血清吸収・膨潤により柔軟に変形し血管形状に一致して血管腔を隙間なく占拠・閉塞した。周囲血管壁は炎症細胞浸潤に乏しく生体刺激性を示すものではなかった。肝・大腿では腫瘍辺縁血管に本粒子が均一に分布し良好な壊死効果を得たと同時に、末梢での限局塞栓により周囲組織を比較的温存することができ、腫瘍の標的塞栓の実現性が示唆された。一方、腎では全腎梗塞に伴いびまん性に分布した腫瘍細胞塊も区別なく壊死を示した。比較群として用いた従来型物質であるPVA粒子(250-300μm)及びゼラチンスポンジ細片(500-1000μm)は粒子径に関らず、粒子凝集及び粒子間血栓形成により近位塞栓傾向を示した。特に肝及び大腿では、塞栓範囲が広くなる傾向がある一方、末梢血管開存による側副血管発達の余地を残すことが示された。 【臨床応用】肝細胞癌、子宮筋腫、頭頚部腫瘍、骨腫瘍、血管腫などの多血性腫瘍において、化学療法剤を併用せずに高吸水性ポリマーを用いて塞栓を行った。材料の生体低刺激性及び塞栓の病変選択性を反映して塞栓後痛は軽微な傾向を示した。切除例では術中出血量の十分な低減を得、良好な腫瘍壊死効果並びに周囲組織の反応が乏しいことを病理学的に確認した。非切除例では、合併症なく病変縮小及び疼痛・出血などの症状緩和を得た。高吸水性ポリマーによる多血性腫瘍の標的塞栓は、良好な腫瘍壊死効果だけでなく合併症や抗癌剤量の軽減が図れるなど、治療域と安全域のバランスが良く、今後の腫瘍性疾患に対する塞栓治療に寄与するものと考えられた。
|