昨年度の実験に基づいて精度管理における問題点の検討を行った。 侵襲式固定具を用いる場合と同等の精度を保ち、非侵襲固定具を用いて定位放射線治療を行うためには、設定の精度に加え再現性と経時的な安定性が求められる。照射前のみで精度管理を行う場合、アイソセンタの設定精度が確保されても、照射時間中の動きは2mm以上生じうることが判明し、精度管理プロトコールにて照射時の経時的モニタリングを必須項目とした。CCDカメラシステムによるアイソセンタ位置精度は0.2mm以下の精度が保証されることを証明し、カメラシステムの精度管理は定期点検にて対応することとした。バイトプレートの反復装着の際の誤差は個人差が大きいことが判明し、総義歯および無歯顎患者にバイトプレートシステムによる分割照射は不適であるとした定位放射線治療では治療計画過程の精度管理も重要であることが判明した。実験では頭尾側方向の誤差の寄与が大きく、CT装置の機械的精度も精度に関与しうることが判明したが、ファントム実験で治療計画を通じて発生する幾何学的誤差の絶対値は1mm未満であることが確認され、プロトコール上は定期の精度管理で対応することとした。 上記の検討を経て、臨床適用のための精度管理プロトコール作成を行った。半年毎に定期的検証を行う項目として、1)CCDカメラシステムの位置取得精度検証、2)ファントムを用いた治療計画過程の総合的位置精度検証、3)ファントムによる直線加速器のモニタユニット精度検証を取り上げた。治療日に毎回検証を行う項目として、1)直線加速器の位置精度検証:アイソセンタ精度、ガントリおよびカウチ回転精度、2)CCDカメラシステムの感度検証、3)バイトプレート脱着の再現性検証(治療開始時)、4)非侵襲固定の安定性測定(毎回治療時)を取り上げた。現在、臨床検討中であり症例集積後にプロトコール公開を行う予定である。
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