化学療法に対する多剤耐性の機序は複雑であるが、その中で腫瘍細胞膜に存在するP-gp(p糖蛋白)、MRP(Multi-drug resistance related protein)、LRP(lung cancer related protein)の関与が示唆されている。^<99m>Tc-MIBIやはP-gpで排泄される薬剤であるが、P-gp非依存性の薬剤耐性機序(MRP、LRP)との関係は不明である。今回、^<99m>Tc-MIBIとP-gp非依存性の薬剤耐性(MRPやLRP)との関係をin vitroで検討した。 方法はヒト由来の癌細胞であるSNB19を用い、抗癌剤であるVP-16の存在下で半年間の培養を行い、抗癌剤耐性細胞を樹立した。Reverse transcriptase polymerase chain reaction法を用いてMRPとLRPの発現の有無を調べたところ、耐性細胞はMRPとLRPの発現を認めた。親株であるSNB19はMRPとLRPの発現は確認されなかった。次に上記細胞内への^<99m>Tc-MIBIの取り込みをautowell scintillation counterで調べた。SNB19感受性細胞への^<99m>Tc-MIBIの取り込みは10分の反応で8%、60分で13%とほぼプラトーに達した。これに対し耐性細胞では^<99m>Tc-MIBIの細胞内への取り込みは5%で感受性細胞に比べ低値を示した。 以上の結果より^<99m>Tc-MIBIの細胞内への取り込みはMRPやLRPといったP-gp非依存性の薬剤耐性機序とも関係があることが示唆された。しかし、上記細胞のP-gp発現の有無をReverse transcriptase polymerase chain reaction法を用いて調べたところ耐性細胞にP-gpの発現が認められ、感受性細胞にはP-gpの発現が認められなかった。つまり、今回の実験において耐性細胞がどの耐性機序で薬剤耐性を獲得し、細胞内からの^<99m>Tc-MIBIの排泄と関係があったのかは評価困難である。このことはin vitroの実験で抗癌剤に対してMRPやLRPのみの発現を行うことは困難で、多数の培養細胞を用いて検討を行う必要があると思われた。 今後は人の乳癌例において症例を重ね^<99m>Tc-MIBIとP-gp非依存性の薬剤耐性機序を調べるつもりである。
|