研究概要 |
これまでに開発したトレーサの低酸素組織モデルへの集積が代謝トラップによることを検証するため,本年度は低酸素部位をもつマウス腫瘍を用い,還元代謝反応の追跡を行った。 腫瘍移植マウスに^<18>FMISOまたは4-Br^<18>FPNをそれぞれ投与し,60分後に摘出した腫瘍から得たメタノール抽出溶液について,その放射性化合物の数と定量を,ラジオTLCにて分析した。^<18>FMISOおよび4-Br^<18>FPNともに腫瘍中ではトレーサ薬物以外に,代謝産物が認められ,さらに4-Br^<18>FPNの代謝物から由来する放射能の割合は^<18>FMISOよりも高かった。4-Br^<18>FPNは^<18>FMISOに比べて腫瘍中で代謝を受けやすいこと,少なくとも2種類の代謝産物が存在することが明らかとなった。 4-Br^<18>FPNは,電子吸引性基により分子のLUMOエネルギー準位が低くなるようにデザインしたものであるが,このような分子の部分的構造変換によってLUMOエネルギー準位を下げるドラッグデザインは,低酸素細胞内での代謝トラッピング反応を促進させるためのアプローチとして効果的である可能性が示唆された。 還元代謝トラッピング反応は,電子を供与する側のHOMOエネルギーにも大きく影響を受けると予想され,LUMOエネルギーが低すぎても還元反応が起こりにくい可能性が考えられるため,よりすぐれた低酸素部位マーカーを開発するためにはいくつかのLUMOエネルギー準位の異なる分子でより広範なデータ解釈が必要と考えている。^<18>FPN,^<18>FONについても同様に調べると共に5-AllylFPN,4-CNFPN等をはじめとする類似物を合成して評価していく予定である。
|