対象:大動脈瘤および腸骨動脈瘤に対しステントグラフト留置術または塞栓術を施行した11症例に、RI標識血小板を用いて凝固機能測定を行った。血小板標識・血小板寿命測定・血栓シンチグラフィ:被検者より40ml採血。抗凝固剤であるACDを添加し遠心分離により血小板の浮遊液を作成。標識にはIn-111 oxine(日本メジフィジックス社)37MBqを使用。室温で15分間標識した。標識は全例で成功した。標識血小板を静注し、1日ないし2日毎に1ml採血。血中のカウントをウェル型シンチレーションカウンタで測定した。カウントをプロットし、直線近似したX軸との交点を血小板寿命とした。RI投与2日後に全身のシンチグラムを撮像し、血小板の集積を画像にて判断するとともに、集積部位のカウントを測定した。検査は術前後それぞれ1週間以内に行ったが、1例では術後早期に再手術となり、検査完了前に終了した。2例では標識用薬剤の確保ができず、検査が不十分に終わった。動脈瘤の評価:全例に造影CT、MRIを施行し、動脈瘤の大きさ、壁在血栓の評価を行った。血栓の画像化(シンチグラフィ):治療前に動脈瘤に一致した強いRI集積を2例に、比較的経度の集積を3例に認めた。集積程度と壁在血栓の程度に関連性は認めなかった。術後の検査では1例を除く全例にステントに沿った集積を認めた。ステントグラフト留置術後に動脈瘤の内腔が血栓化した部分へのRI集積は明らかでなかった。血小板寿命測定:術前の血小板寿命の平均は9.1日、術後は10.1日であった。術前後の血小板寿命の変化は明らかでなかった。ステントグラフト留置術に伴い全身的に凝固異常をきたした例はなかった。結論:動脈瘤へのRI標識血小板の集積は、新鮮な血栓形成を示唆する。今回の対象には術後に劇的な凝固系の変化をきたした例はなかったが、今後症例を重ねた検討が望まれる。
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