心臓交感神経終末のプレシナプス部に存在するnorepinephrine transporter(NET)を標的部位として、心臓交感神経機能診断放射性薬剤の開発を計画した。母体化合物としてNETへの親和性が報告されているnisoxetineを選択し、そのphnoxy基の2位にヨウ素を導入した化合物、(R)-N-methyl-3-(2-iodophenoxy)-3-phenylpropamine((R)-MIPP)を設計した。(R)-MIPPの合成は(S)-3-chloro-1-phenylpropanolと2-iodophenolをMitsunobu反応により立体選択的に(R)-1-chloro-3-(2-iodophenoxy)-3-phenylpropaneを収率68%で得、これに過剰量のmethylamineを加えて(R)-MIPPを収率70%で得た。この化合物のNETへの親和性をラットの心臓の膜画分で[^3H]desipramineを用いた阻害実験により検討した。その結果、(R)-MIPPはNETに高い親和性を示し、従来のNET阻害剤であるnisoxetineよりも約5倍高い親和性を示した。(R)-MIPPの放射性ヨウ素標識は(R)-MIPPのヨウ素を臭素に置換した化合物を合成し、これを前駆物質として臭素-放射性ヨウ素交換反応を行うことにより(R)-[^<125>I]MIPPを放射化学的収率60%以上、放射化学的純度95%以上で得ることに成功した。次いで交感神経系の以上が報告されている糖尿病をモデル疾患として選択し、心臓におけるNETの発現の変化を検討した。その結果、糖尿病モデルラットでは下壁における密度が正常ラットの下壁よりも有意に減少していた。以上のことより、様々な心疾患でNETの発現が変化している可能性があり、NETを標的とする核医学診断の可能性が示唆された。
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