心臓交感神経終末のプレシナプス部に存在するnorepinephrine transportern(NET)を標的部位として、心臓交感神経機能診断放射性薬剤の開発を計画し、昨年度は、(R)-N-methyl-3-(2-iodophenoxy)-3-phenylpropanamine(MIPP)を設計、合成し、さらにその放射性ヨウ素標識体である(R)-[^<125>I]MIPPの合成方法を確立した。 本年度は、この標識化合物を用いてラットにおける体内分布実験を行ったところ、本化合物は投与早期には心臓に高く集積し、その後のクリアランスがはやいことが認められた。さらに(R)-[^<123>I]MIPPを合成し、ラットにおけるSPECT撮像を行ったところ、画像診断上問題となる隣接臓器である肺および肝臓への集積は低く、投与30分という短時間で心臓の明瞭な画像が得られた。さらに、心臓における代謝物の検討を行ったところ、投与30分の時点でほぼ未代謝の状態であることが認められた。また、心臓への集積がNET選択的であるかどうかを様々な阻害剤を用いたインビボ阻害実験により検討した結果、本化合物はインビボでもNET選択的に心臓へ集積していることが認められた。これらの検討をもとに、NETの分布密度が変化している糖尿病モデルラットに本化合物を投与して、心臓での集積を検討した。その結果、本化合物の集積とNETの分布密度は相関していることが認められた。以上の結果より、(R)-[^<123>I]MIPPは心筋のNET標識放射性薬剤としての基本的な性質を有しており、NETが変化している心疾患の診断に有用な薬剤であることが示唆された。
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