心筋では主に長鎖脂肪酸によるエネルギー代謝が行われているが、肥大心症例、特に肥大型心筋症では心筋脂肪酸代謝が高度に障害され、長鎖脂肪酸代謝に必須であるカルニチンの血中濃度と関連をもつことを示した.しかし、肥大心における心筋代謝障害の経時的変化については検討がなされていない. 本研究の目的は肥大心症例(肥大型心筋症・高血圧性肥大心)における血中・心筋カルニチン濃度の心筋脂肪酸代謝障害との関連を解明し、血中・心筋カルニチン濃度が肥大心の進展過程において心筋脂肪酸代謝障害を反映する指標となるかを証明することにある. まず基礎実験においては、各々10週齢の高血圧ラット(SHR/izumo)および肥大型心筋症ラット(WKY/NCrj)を用い、血中及び心筋カルニチン濃度を測定した.血中では肥大型心筋症ラットが高血圧ラットより高値を示したが、心筋では肥大型心筋症ラットで低値を示した.さらに肥大型心筋症における心筋カルニチン濃度は心筋錯綜配列が顕著である左室の前壁中隔接合部・後壁中隔接合部で明らかに低値を示し、病理学的所見と関連していることが示唆された.一方、高血圧ラットでは心筋カルニチン濃度の局所的不均一性は見られなかった.これらの結果にもとづき、血中/心筋カルニチンの連関及びカルニチン・心筋脂肪酸代謝についてはオートラジオグラフィを用いて今後さらに解析をすすめているところである.経時的変化についても20週齢、30週齢のラットを対象に検討中である.
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