研究概要 |
本研究では、低線量の電離放射線に着目し、胎児の催奇形性に対するビタミンE誘導体TMG(2-(α-D-Glucopyranosyl)Methyl-2,5,7,8-Teramethylchorman-6-OL)の放射線防護効果について検討した。従って、本研究では、これらの副作用を改善するのと同時にラジカルスカベンジャー作用をin vivo & in vitroレベルまで実験的に検証した。まず、胎児の発生決定時期(器官形成期)に注目して奇形実験に多く使われているICRマウスを用いて放射線に対する胚死亡、外表奇形、骨格奇形に着目し、放射線に対する胚の細胞・分子レベルの検討を行った。放射線の催奇形性に対するTMGの放射線防護効果のメカニズムについて実験的に観察・解析した。これらの胎児影響の放射線防護効果が明らかであれば、子供や成人も当然、防護でき、放射線防護剤として有用の筈である。実験の結果、胚死亡率については、TMG投与による防護効果が明らかに認められた。胎児死亡率については、すべての照射群において統計学的な有意差は認められなかった。奇形発生率に関しては、TMG投与による放射線防護効果が認められた。胎児体重についてもTMG投与により、胎仔体重の減少を抑えることができた。本研究において、TMGには2.0Gy放射線照射に対する胚死亡、奇形発生そして胎児体重の防護効果が明らかに認められた。また、放射線に対する白血球(リンパ球、単球、好中球)に対する放射線単独照射群とTMG投与後、放射線照射群との比較においては、明らかにTMG投与後、放射線照射群において放射線防護効果が認められた。更に、TMGにおいて抗酸化効果も明らかにされた。従って、本研究により、これらのTMGのRadical scavenger効果と活性酸素阻止効果により、放射線防護効果が認められたと考えられる。また、更なるメカニズムについての研究を進めている。
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