研究概要 |
本研究の目的は野兎を用いて5-FUの動脈内持続投与を注入量および注入速度,薬剤濃度を変化させ,数週間にわたる末梢血管の内腔および血管壁の形態変化を観察し,動注による影響を検討し,肝組織の変化も検討することである.我々は2.5kgの家兎20匹を対象とした.方法はまず全麻下にて固定したのち,脾動脈を剥離,露出させ直接穿刺によりテーパードカテーテルを挿入し同血管を結紮固定,透視下にて腹腔動脈系の造影を行い血管解剖を把握する.実際の血管造影はDSAの撮影も行い正確な血管解剖の把握,及びカテーテル位置の問題のないことが確認可能であった.同時にカテーテルと結合して浸透圧微量注入器を腹腔内に留置.この注入器内にはコントロール群である生理食塩水と5FUをそれぞれ群別に注入した.いずれも投与量は2mlとした.また同時に閉腹後も血管造影を可能とするために三つ又状にもう一つのカテーテルも留置し,腹壁部から造影剤を注入できるようにポート状のものを埋め込む工夫もおこなった.全例このシステムを採用し統一した.現段階では術後観察中に死亡例が多発したためコントロール群である生理食塩水注入分のみの結果にとどまっている.この群に関しては病理解剖も行い血管内膜を主体とした血管壁の観察や動脈径の測定などが可能であった.同群においては明らかなカテーテルによる機械的刺激による血管壁への影響は認められず,また末梢側も含め生理食塩水による内膜などの変化も認められなかった.しかしながら抗癌剤使用群では感染によるものと考えられる死亡例が多発したため現在薬剤濃度を再検討中である.おそらく濃度が高すぎたことが原因と考えられているが,カテーテル留置時における侵襲性の高い手術操作も加味されていると考えられる.なお抗癌剤投与群も初期段階による血管造影や病理学的検討は進んでいる.今後も引き続き実験計画に基づき検討していく所存である.
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