研究概要 |
今回の研究では,がんに対する放射線感受性の違いを明らかにすることを目標としており,以前から言われてきた放射線感受性を決定する因子としてのアポトーシスにとらわれることなく,照射後の分裂死と細胞形態が似ている老化による細胞死も念頭におき,放射線感受性の先行指標を検索する.今年度は,p53 statusの異なる種々の細胞株(放射線によりアポトーシスを起こすwild-type p53を有するヒトPNET(primitive neuroectodermal tumor)細胞株,同一起源でwild-type p53を有し照射によるアポトーシスを起こす卵黄嚢腫瘍細胞株(NMT-1)とmutant-type p53を有し照射によるアポトーシスの頻度の低い卵黄嚢腫瘍細胞株(NMT-1R))を用いて検討を行った.照射によるアポトーシスを抑制する目的でcaspase-3/CPP32 inhibitorで処理し,アポトーシスの多寡ならびにcaspase-3/CPP32 activityを検討したところ,すべての腫瘍細胞株で,caspase-3/CPP32 inhibitorの処理により照射によるアポトーシスが抑制され,またcaspase-3/CPP32 activityは低下した.また,NMT-1とNMT-1Rでは,放射線感受性(caspase-3 inhibitorのdose escalation studyも検討中)の初期結果でも放射線感受性の低下を認めた.さらに,照射後の老化関連因子の変化についてもtelomere長,telomerase activity,CDK inhibitorなどを検討中であり,CDK inhibitorの一つであるp21/WAF-1/CIP-1については,PNET株とNMT-1では,照射後の発現増強を認め,NMT-1Rでは照射による発現の変化を認めなかった.
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