研究概要 |
まず最初に精神分裂病者(統合失調症者)の脳磁場(MEG)測定の前段階として、正常値を求めるために15人の対照健常被験者の脳磁場測定をし、また統合失調症患者の急性増悪期と寛解期の2つの病相期における事象関連電位(ERP)の測定を行なった。MEGデータは本研究計画書で申請した光磁気ディスクに記録した。脳磁場計測は約200チャンネルの全頭型脳磁図計(Neuromag社製)を用いて記録し、データをオフラインで解析し発生源推定を行なった。また、健常被験者の一部はさらに詳しい発生源推定を行なうためにMRI検査を施行した。被験者数がまだ不十分ではあるが、15人のdipoleの位置及びモーメント量の平均値を求めることで、正常値の推定を行なうことが出来た。 統合失調症患者に関しては急性期から寛解期に至る病態を解明するための脳磁場計測の前段階として、脳波測定を行いMMNを計測した。13人の患者を対象にBPRS (Brief Psychiatric Rating Scale)、PANSS (Positive And Negative Syndrome Scale)で臨床症状評価および投与薬物の力価量計算をした。病相期に関わらず統合失調症のFzにおけるMMN振幅は健常者に比較して有意に低下していた。しかしながら、主に側頭葉の活動を反映する電極部位である両側mastoidに関しては、統合失調症患者の症状増悪期のMMN振幅は寛解期に比べ有意に低下しており、MMN振幅の回復とBPRS得点の間には有意な相関が認められ、これを誌上(Biological Psychology,2002)で発表した。 さらに今年度はおもに、未治療の統合失調症患者を対象に、治療前・治療後の事象関連脳磁場計測を行い、事象関連電位と同様、その脳磁場成分においても、健常者と比較し、振幅低下が認められることを解明した。
|