神経遮断薬悪性症候群(NMS)発症の既往のある患者群を17例と、NMS発症症例と比較し同等量の抗精神病薬による治療を同等の期間受けながらもNMSの発症が見られなかった患者をコントロール群として163例を検索した。計180例からDNAを分離し、PCR法にてドーパミンD2受容体遺伝子多型であるTaqI A遺伝子多型、-141C Ins/Del遺伝子多型及びドーパミンD3受容体遺伝子多型のSer9Gly遺伝子多型を検索した。 TaqI A遺伝子多型のA1遺伝子頻度は、NMS群(59%)でコントロール群(35%)に比較し有意(P=0.012)に頻度が高く、A1遺伝子保有者もNMS群(16/17:94%)でコントロール群(93/163:57%)に比較し有意(P=0.003)に多かった。しかしながら、他の遺伝子多型の遺伝子頻度あるいは遺伝型はともにNMSと関連がなかった。 以上の結果より、NMSの発症にTaqI A遺伝子多型が密接に関与することが追認されたものの、他の2つの遺伝子多型はその発症と関与しないことが示唆された。 なおこれに平行し、抗精神病薬の難治性副作用である遅発性ジストニアの遺伝的素因の解明も行った。遅発性ジストニアを発症した9例を検索し、上記のドーパミンD2およびD3受容体遺伝子多型と抗精神病薬の代謝に関与するCYP2D6遺伝子多型をPCR法で同定した。その結果、特定の遺伝子あるいは遺伝型は検出できなかった。したがって、遅発性ジストニアの発症にはこれらの遺伝子多型は関与しないことが示唆された。
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