本研究に先立ち、動物実験において、ラットにACTHを亜慢性的に投与(10日間、50μg/1匹)し、内分泌的に変化させたラットの大脳皮質におけるセロトニン2A受容体の免疫組織化学的検討を行った。ラット大脳皮質におけるセロトニン2A受容体は、ACTH投与群において有意に免疫反応性が増大しており、また、海馬での免疫反応性も有意に増大していた。うつ病では、高コルチゾール血症や、デキサメサゾン-CRH負荷試験における非抑制症例などが認められ、内分泌学的な変化がその病態と関連している可能性が示唆されている。一方、従来からうつ病と脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどのモノアミンの代謝の低下が関与していると考えられ、各種抗うつ薬がセロトニン2A受容体のダウンレギュレーションを引き起こすことが知られており、今回の知見は、従来の所見と合致したものであると考えられる。この知見に関しては、2001年国際神経精神薬理学会(CINP)広島会議にて発表し、現在論文投稿の準備をしているところである。 また、今年度はヒト死後脳の収集の準備を開始した。群馬大学医学部附属病院神経科精神科並びに関連する各病院に通院・入院していた感情障害患者のうち、何らかの理由により死亡した患者の脳を収集するため、当大学などの倫理委員会に研究計画書を提出、同委員会にて承認を得られた。これに基づき、現在ヒト死後脳の収集に取りかかっているところである。
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