f ynは、精神分裂病との関連が強く示唆されているNMDA受容体に機能的関連を持っている。また、内在性のD-セリンは、NMDA受容体のグリシン結合部位にアゴニストとしては働くことから、精神分裂病におけるNMDA受容体の神経伝達障害の可能性を考えるうえで、重要な因子として挙げられる。そのため、D-セリンを合成する酵素、セリンラセマーゼの機能変調がD-セリンの産生異常を起こし、NMDA受容体やfynの機能異常を生じることが、精神分裂病の病態にかかわることが十分に予想されたため、その調節機能を調べる目的で、イースト2ハイブリッド法を行い、セリンラセマーゼ結合蛋白を検索した。 その結果、PICK1とGRIPを同定した。両者は、PDZドメインを含み、AMPA受容体と結合し、さらにはAMPA受容体とのクラスタリングにも関与していると考えられており、いわゆるscaffold蛋白のひとつとして注目されている。また、特にPICK1は、検索の結果、興味深いことに連鎖解析などで精神分裂病との関連が強く示唆されている染色体22q13上に位置していた。 そのため、セリンラセマーゼ、PICK1を、培養細胞に強制発現させ、免疫沈降法や免疫染色法によって、セリンラセマーゼ、PICK1の機能解析を進めてきた結果、セリンラセマーゼとPICK1の結合を再確認し、その結合部位を同定することができた。そして精神分裂病患者からのgenomicDNAを用いて、PICK1の多型解析を行い遺伝子変異を検索しているが、正常被験者と比較し病的意義については検討を要する。今後も多くの症例を集める必要がある。また、D-セリンのNMDA受容体、fynを介しての精神分裂病の病態への関与の可能性を明らかにしていくために、今後も更なる検索が必要である。
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