研究概要 |
われわれは、衝動性に関連した脳機能局在や情報処理過程およびそれに関与するセロトニン神経系の役割を明らかにすることを目的とし脳機能マッピング法を用いた検討行っている。 脳賦活課題として、報酬のバランス(大きいvs小さい)、報酬獲得までの時間的作業(長いvs短い)、獲得した報酬によるフィードバック機構などの構成要素をもつ課題で、短い時間的作業で小さな報酬を得るか(衝動的度合いが高い)、長い時間的作業で大きな報酬を得るか(衝動的度合いが低い)の選択を決定する課題を新たに作成した。課題遂行中の脳機能の変化を、健常ボランティア12例を対象に、1.5Tの島津Marconi社製のMRI装置を用いて測定した。 その結果、コントロール課題と比べて短期小報酬あるいは長期大報酬選択を行っている際には、基底核および、右の前頭前野、帯状回前部、両側の頭頂葉、左小脳、左島などにおいて優位な活性化が見られたことから、これらの部位がこの時間的スケールを持った報酬の選択に関する意志決定に関与していることが分かった。 今後は、人為的なセロトニン機能の変更(セロトニン機能を低下させる因子として急性トリプトファン欠乏食、機能亢進させる因子としてd,1-fenfluramine投与)によって、この脳賦活課題遂行中の脳機能の変化をとらえることにより、衝動性に関連する脳機能局在や情報処理過程が明らかになるだけでなくセロトニン神経系の果たす役割についても明らかにすることもできる。さらに、高い衝動性を有する疾患の病態解明の一助となることが期待される。
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