研究概要 |
徳島大学医学部附属病院では,脳血管障害患者を発症早期より治療する専門ユニットであるストローク・ケア・ユニット(SCU)が稼働中で,救急医,脳神経外科医,放射線科医,内科医および精神科医などが協力して診察,治療にあたっている.この体制により,従来は脳血管障害の慢性期にしか関わることの少なかった我々が,急性期患者を診察する機会を得て,患者の精神症状の診察,治療を行なった. 前年の研究により、うつ状態は超急性期にはほとんど認められないことが明らかとなった。そのため、我々はSCUに入院中のものに加え,退院したものも含めた全患者(281名)を対象に、自己記入式の質問紙による心理検査であるZungs Self-rating Depression ScaleとwhoQOL26を行った。 その結果、当院のSCU入院患者のうつ状態の頻度は21.8%であった。今回の調査では、病巣の左右差、障害脳部位、障害された血管、罹病期間と抑うつ尺度に有意な関係はみられなかった。抑うつ尺度は、TIA、ラクナ、脳梗塞、脳出血の順に高く、むしろ元疾患の重症度が軽いほど、抑うつ尺度は高い傾向がみられた。元疾患の回復度と抑うつ尺度には有意な関係はなかったが、回復が良好なものほどquality of life(QOL)が有意に高かった(P<0.05)。また、抑うつ尺度とQOLには、さらに強い有意な負の相関(P<0.0001)がみられた。以上より、身体的障害より、うつ状態が脳血管障害後のQOLに、より強い影響を与える因子であることを明らかにした。脳血管障害後のうつ状態に対して、適切な治療がなされるべきと思われた。
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