アルツハイマー病(AD)における神経細胞死の原因としてβアミロイド蛋白(Aβ)による細胞毒性が考えられており、さらにその毒性の背景にはフリーラジカルが関与しているといわれている。平成13年度にはAβを添加することによって培養細胞系においてフリーラジカルが生じその結果PC12細胞の細胞膜障害、不飽和脂肪酸過酸化を生じることをElectron Paramagnetic Resonance(EPR)法にて確認した。さらに細胞外マトリックス成分の一つであるラミニンのフリーラジカル消去能、抗酸化能について検討した。平成14年度は脳内抗酸化物質の同定をラミニンに関して検討した。ラミニンには神経突起伸展、細胞接着、ヘパリン結合などの生物活性が存在しており、さらにラミニンの構造中には生物活性を示す部位がいくつか報告されている。そこでラミニンの生物活性部位のペプチドIKVAVを作成しその抗酸化能についてEPR法にて検討した。フリーラジカル発生系(ハイドロキシルラジカル)としてFenton反応、紫外線照射系を用いた。比較対照物質としてwholeラミニン、ファイブロネクチン、牛血清アルブミンを用いた。その結果Fenton反応系においてはいずれも抑制効果に差はなかったが、紫外線照射系においてはwholeラミニンには劣るもののファイブロネクチンと同等の抑制効果を示すことが判明した。これらを考慮しAβの毒性にはフリーラジカルが関与しており、脳内抗酸化物質として細胞外マトリックス成分の一つであるラミニンがありその生物活性部位にも抗酸化作用があることが判明した。脳内抗酸化物質によるADを含むフリーラジカル関連疾患に対する治療薬としての可能性を示峻するものと考えた。
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