研究概要 |
本研究ではアルコール・薬物依存における神経細胞障害性という観点から、Ca^<2+>結合蛋白質であり、G蛋白質にも結合することでcAMP産生系情報伝達の制御に関与すると考えられるアネキシンの変化を検索した。ヒト死後脳を用いてアネキシンIV量をアルコール依存症群と対照群で比較検討し、これまでにアルコール依存症群でのCa^<2+>感受性アデニル酸シクラーゼの増加が報告されている海馬領域で、アルコール依存症群におけるアネキシンIVの有意な増加を認めた。他の領域では有意な変化を認めなかった。次に培養細胞を用いて、エタノールによるアポトーシス誘導をミトコンドリア酵素活性(MTT法)およびカスパーゼ3活性を指標に検討した。ラットグリオーマ細胞株(C6)およびヒト肺腺癌由来細胞株(A549)いずれの細胞においてもエタノール濃度・暴露時間依存的に障害活性が強くなることが認められた。C6ではA549に比しエタノールによるアポトーシスが惹起されやすく、障害活性は細胞の種類により異なることが示された。脳における発現が確認されているアネキシンI, IVおよびVに関してエタノール添加による発現変化を検討し、いずれの細胞においてもエタノール暴露によりアネキシンIVの増加を認めた。アネキシンIとVはエタノール添加で有意な発現量の変化が認められず、アネキシンIVの発現がエタノールに選択的に反応して誘導される可能性が示唆された。エタノールはCa^<2+>チャンネルを介して細胞内Ca2+濃度に変化を及ぼすことが知られているが、本研究で示されたエタノール添加後のアネキシンIVの発現増大が細胞内のCa^<2+>濃度変化によるものかに関しては、細胞内Ca^<2+>動態と共に今後検討が必要である。エタノール暴露後の細胞内アネキシンIVの分布・局在変化を免疫組織染色により検討した結果、アネキシンIVは細胞質、細胞膜いずれにもその存在が認められた。
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