EPOR変異体によるEPORノックアウト(KO)マウスのレスキュー:血球特異的に発現する遺伝子制御領域(GATA-1HRD)に、EPOR細胞内ドメイン変異体(SHP1結合部位欠損、SHP2結合部位欠損)cDNAを結合させたトランスジーン(Tg)を持つTgマウスを作製した。上記TgマウスとEPORヘテロマウスの交配により、EPORヘテロ体かつTgを有するマウス(EPOR+/-::Tg(+))を得、EPOR+/-との交配により、内因性のEPORを保有せず、外来性のEPOR変異体遺伝子のみを有するレスキューマウス(EPOR-/-::Tg(+))の作製を試みた。この手法で、全長型cDNAのTgではEPOR KOマウスのレスキューが可能であるが、SHP1結合部位、SHP2結合部位欠損Tgではレスキューできず、貧血により胎生致死となることがわかった。GATA-1HRD制御下でのEpoR発現には、EpoRのC末端領域が必要であると考えられ、PI-3kinaseによるアポトーシス抑制の重要性が示唆された。 貧血、血小板増多を示すマウスの原因の特定:SHP1結合部位欠損マウス3ラインのうち1ラインで、Hb5-8g/dlの貧血、および150-240万/μlの血小板数増多を呈するマウスが出現した。このような表現型はTgを2つのアレルに持つマウスのみに認められ、またTgの発現量に関係ないことからTgが挿入された部位特異的な変化であると考えた。マウス骨髄細胞、胎児肝細胞で行った解析から、c-kit、Sca-1ダブルポジティブ細胞の増加、巨核球-血小板系の増加、および赤芽球の減少が認められた。巨核球系、赤血球系の共通の造血幹細胞から赤血球系への分化が進まず、巨核球へ分化が進んでしまうものと予想される。Tg断端部位の検索により、Tgはマウス10番染色体上、c-Mybの約80kbp上流に挿入されていることが判明した。Tg挿入により影響を受けた遺伝子の特定をBACおよびESTを用いて進めている。BACRP-24 63G10を用いたノザンブロットでTgマウスではmRNAの発現が低下していることが判明した。このBACを用いて新たな造血調節因子の同定を進めると同時に、BAC Tgマウスを作製し、レスキューを試みているところである。
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