本研究はフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)に対する新たなターゲティング治療法の開発を目的としている。最初にBCR/ABLチロシンキナーゼインヒビター(STI571)を封入したリポソームを作成し、Ph+細胞株に対する効果を検討した。逆相蒸発(REV)法を用いてSTI571封入-トランスフェリン(TF)-PEG-リポソーム、STI571封入-PEG-リポソーム、STI571封入-bareリポソームの3種類のリポソームを作成し、これらを用いてまずPh+細胞株であるK562細胞に対する増殖抑制効果を検討した。フローサイトメトリーにてK562細胞のTFレセプターの発現率(38.6%)を確認した後、MTTアッセイにて上記3種類のSTI571封入リポソームおよび、STI571単独での細胞増殖抑制効果を確認した。細胞増殖抑制効果(%)=(1-サンプル測定値/陰性対象測定値)X100で算出したところ、STI571封入-トランスフェリン(TF)-PEG-リポソーム、STI571封入-PEG-リポソーム、STI571封入-bareリポソーム、STI571単独の細胞増殖抑制効果はそれぞれ55.3%、24.7%、4.0%、41.5%であった。以上より、STI571封入リポソームが作成可能であること、およびin vitroでのTF-PEG-リポソームの有用性が確認されたため、現在TFのかわりに抗CD19抗体を用いた、STI571封入-抗CD19抗体-PEG-リポソームを作成中である。STI571封入-抗CD19抗体-PEG-リポソーム作成後はCD19陽性Ph+ALL細胞株(BV173細胞など)を用いて同様の実験を行う。
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