研究概要 |
癌抑制遺伝子の不活化は各種悪性腫瘍の発生の主要な原因であり、小児急性リンパ性白血病(ALL)においても、その発症に関与するものとして、p53,Rb,p16等多数の癌抑制遺伝子に関する研究がなされてきた。しかしながら、それらの研究の多くは、初発時の検体を用いて行われており、再発時に生じている遺伝子異常に注目した研究はあまりなされていない。それゆえALLの再発に関与している癌抑制遺伝子の発見がその再発のメカニズムを理解する上で極めて重要である。本年度行った研究にて、申請者は以下の二つの知見を得た。 1 再発小児急性リンパ性白血病におけるLOH分析。 39例の再発小児急性リンパ性白血病検体を用い、71個のマイクロサテライトマーカーをプライマーとして、PCR法によりLOH分析を行った結果、染色体9番短腕のLOHが39%に、染色体12番短腕のLOHが25%に、それぞれ認められた。そのほかにも4番長腕、6番長腕、17番長腕に高頻度にLOHが認められた。次に、この再発時の結果と、すでに検討されている、それらの検体の初発時のLOH分析の結果を比較した。何例かは初発時と再発時に同じLOHを有していたが、初発時と再発時に異なるLOHパターンを示す症例も認められた。 2 再発小児急性リンパ性白血病における癌抑制遺伝子の変異の検討。 再発小児急性リンパ性白血病検体を用い、PCR-SSCP法により、最近同定されたCHK2及びCEBPα遺伝子の変異の有無を検討した。検索した20例中では変異は認められなかった。この結果よりCHK2及びCEBPα遺伝子の変異は小児急性リンパ性白血病の再発には深く関与していない事が明らかになった。
|