本研究では、ヘマンジオブラストから血球が産生する時、転写因子AML1により制御され、造血発生に必要不可欠な因子を特定することを目的としている。 H13年度においては、温度感受性SV40 T抗原をレトロウィルスベクターを用いてAML1欠損マウスAGM領域培養細胞に導入し株化細胞を得た。ここで樹立した温度感受性株は、フローサイトメトリーを用いて解析した結果、Sca1、PCLP1、オンコスタチンM受容体などヘマンジオブラストの特徴を表面抗原として持つ細胞であった。この細胞株は転写因子AML1が欠損している以外は、AGM領域由来のヘマンジオブラストとしての性質を保持している可能性が高く、AML1の再導入によってその細胞株におけるAML1の転写活性可能が変化するなど、AML1の機能を細胞レベルで観察出来ることが明らかとなった。そこで、レトロウィルスベクターを用いて効率良くAML1をこの細胞株に導入し、その後の表現形質を観察するとともに、AML1導入前・後での遺伝子発現の変化をサブトラクション法でモニターした。その結果、細胞形態等についての変化は観察されなかったが、AML1の発現依存的に発現が抑制される遺伝子がクローニングされた。データベース解析により、この分子はインスリン様増殖因子結合タンパク-3(IGFBP-3)であることが確認された。アデノウィルスによりAML1を再導入してもIGFBP-3の発現は抑制されたことから、この現象は樹立したAML1欠損細胞株において一般化できる現象と考えた。 現在、AML1によるIGFBP-3の発現抑制と造血細胞の分化および増殖について、コロニーアッセイ法を用いて解析している。
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