腎糸球体輸入細動脈と輸出細動脈は腎微小循環(糸球体血行動態)の調節に重要な血管部位であり、それらの血管抵抗バランスは糸球体血行動態の決定因子の1つである。しかしながら、これらの細動脈の血管抵抗調節機序における細胞内シグナル伝達機構の詳細は未だ不明である。そこで、アンジオテンシンIIやノルエピネフリンにょる輸出入細動脈の収縮に低分子量G蛋白の一つであるRhoおよびその標的蛋白であるRho-kinaseがいかに関与しているかを糸球体微小単離灌流実験系を用いて検討した。アンジオテンシンIIとノルエピネフリンはいずれもウサギの輸出入細動脈を濃度依存性に収縮させたが、この収縮はRho-kinaseの選択的阻害剤であるY-27632によって有意に減弱した。興味深いことに、アンジオテンシンIIによる収縮はノルエピネフリンによる収縮よりも強く抑制される傾向にあり、これらの血管作動物質による細胞内カルシウムシグナル伝達機構が異なっている可能性が示唆された。また、輸出細動脈は従来のカルシウム拮抗薬が作用しない血管であるが、Y-27632が有意に血管収縮反応を抑制したことより、この細動脈においてもカルシウム感受性の抑制により血管抵抗の低下が得られることが明らかとなり、糸球体高血圧を呈する病態における新たな治療法の可能性が示唆された。 現在、高血圧動物モデルの輸入細動脈における血管反応性あ異常にRho-kinaseがいかに関与しているか検討するとともに、Rho-kinaseを阻害しておくことで高血圧性腎障害の進展を抑制できるか否かをin vivoの実験系でも検討する予定にしている。
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