研究概要 |
本研究は生体用電子スピン共鳴装置(in vivo ESR(or EPR))を用い,腎疾患における臓器抗酸化能減弱時期及び全身の酸化ストレス動態と病変の関連を解明し,腎炎の抗酸化剤治療に関する基礎データの提供を目的とする2年研究である,本年度は以下の新知見を得た. 1.Nrf2遺伝子欠損マウスの腎炎発症における酸化・抗酸化メカニズム及び組織還元能の動向:転写因子Nrf2の遺伝子欠損マウス(雌)は加齢により酸化ストレスの増大と伴にヒトループス腎炎様病変を発症する. この過程における組織還元能の推移をin vivo ESRを用い解析した. <結果>___- (1)若年時からNrf2欠損マウスではCarbamoyl-PROXYL(CP)の半減期が上腹部で延長している. (2)この半減期の延長は加齢により更に顕著となる. (3)ESR画像ではCPの消失遅延は腎・肝において認められる. (4)上記所見は臓器ホモジネートを用いたex vivoの測定でも確認される. これらの結果はNrf2欠損マウスでは若年時から臓器還元能が低下しており,これが加齢過程で増大することが腎炎発症に関与していることを示す.また半減期測定と画像化解析の併用により,信号分離と臓器同定というin vivo ESRの現在の問題点を克服したものである. 2.短寿命ラジカルのスピントラップ検出と画像化:スピントラップ剤DTCSを用い,リポポリサッカライド(LPS)投与マウスに於いて内因性NOをin vivo ESRにより検出・画像化することに成功した.腎領域NOの三次元ESR画像として初の報告例である. 3.表面コイル型共振器(SCR)を用いた解析:本年度はSCRにより正常マウスでのスピンプローブ動態を解析した. 来年度はNrf2遺伝子欠損マウス加齢過程での還元能変化を更に追跡し,また雄性マウスも用い性差による組織還元能の違いも追跡する.またSCRを病態解析に応用する.
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