傍糸球体装置は様々な構成要素が集まった機能単位であり、腎微小循環の調節やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を介する全身の循環にも重要な働きをしている。ギャップ結合はイオン、cAMP、アミノ酸など直径2nm以下(分子量1000)の小分子物質を自由に通過させることができ、細胞の同期、情報伝達に大きな役割を果たす事が考えられる。実際、細胞の遊走、弛緩、増殖、分化、細胞間のCaシガナルの伝達などに重要な役割を果たしていることが、同期が機能制御の重要と考えられる心筋細胞などで近年明らかになってきている。傍糸球体装置を構成する細胞には豊富なギャップ結合が見られ、ギャップ結合が糸球体装置の情報伝達に関与することが考えられる。本研究は傍糸球体装置のシグナル伝達におけるギャップ結合・カルシウムウェーブの役割を検討することであり、以下における知見を得た。 1.培養ラットメサンギウム細胞のギャヅプ結合の存在を機能解析法、免疫組織化学的解析法で確認した。 2.メサンギウム細胞間のCa波伝達にギャップ結合が関係することを証明した。 3.この細胞間のCaシグナルは、メサンギウムの同期収縮が関わっていることをあきらかにした。(第34回米国腎臓学会、第25回日本IgA腎症研究会発表) 4.培養ラットレニン産生細胞にギャップ結合蛋白の存在を認めなかった。 5.レニン産生細胞間のCaシグナルは、ATPが関連することを見出した。
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