研究概要 |
本研究は、アミノ酸のベクトル輸送を可能にするトランスポーター分子の局在機構を解明し、頂上膜に欠損したアミノ酸輸送系を基底膜よりリクルートすることでアミノ酸のベクトル輸送を可能にする基礎実験を通して、アミノ酸尿症の治療法を確立する。II型膜糖蛋白質(rBAT,4F2hc)は一部のアミノ酸トランスポーターの頂上膜への発現に必須な分子であり、これらと共存することで、トランスポーター本体は頂上膜へと移動することができる。rBATは腎管腔側へ、4F2hcは血管側へとトランスポーターの発現極性を決定する。これら分子の細胞外ドメインは相互作用するトランスポーターの選択に重要であり、細胞内ドメインは細胞膜極性(方向性)に関わると考えた。そこでアミノ酸トランスポーター分子の局在機構(方向性)を解明する目的でrBAT、4F2hcの細胞内外を交換したchimera cloneを作製し検討した。極性のない細胞(Xenopus卵母細胞)においては細胞膜極性(方向性)に関わる細胞内ドメインを交換してもトランスポーターの選択に必要な細胞外ドメインが残っていることで、細胞膜に発現し、それぞれのトランスポーターの機能特性を示す輸送活性が確認された。極性のある細胞である腎近位尿細管細胞であるMDCK細胞においては細胞膜極性(方向性)に関わる細胞内ドメインを交換すると、通常管腔側に発現するトランスポーターが血管側に発現し、rBAT、4F2hcの細胞内ドメインは相互作用するトランスポーターの発現の方向性を決定する事が示唆された。これら分子の細胞内ドメインには方向性を決定するシグナル配列が存在し、未同定の蛋白が結合することで細胞膜へ向かう細胞内小胞に含まれ移動することが考えられるため、今後yeast two hybrid systemを用いてrBAT、4F2hcの細胞内ドメインに結合する分子を同定する予定である。
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