腎臓における25-水酸化ビタミンD1α位水酸化酵素(1α位水酸化酵素)は血中の活性型ビタミンD濃度を規定する重要な酵素である。血中リン濃度による本酵素の発現調節メカニズムはまだ不明な部分が多い。今回の検討では低リン食によってもたらされる低リン血症が血中ビタミンD濃度を上昇させる分子機構を明らかにすることを目的とした。 まず、ラットに低リン食を投与したところ、急速に低リン血症が出現し、同時に血清ビタミンD濃度の上昇がみられた。この上昇は腎臓における1α位水酸化酵素の蛋白発現量およびmRNA発現量の亢進を伴っており、この1α位水酸化酵素の遺伝子発現レベルでの調節が鍵となっていることが判明した。同様の低リン食を、下垂体を摘出したラットに与えてみると、この現象は認められなくなった。このことは低リン食がビタミンD濃度を上昇させる機序に下垂体ホルモンが関与することを示している。そこでいくつかの下垂体ホルモンを下垂体を摘出したラットに補充したところ、成長ホルモンがメディエータとして働いていることが明らかとなった。一方で、リンを制御する新しい機構にPhex-phosphatonin系が注目されている。そこで、これらの動物におけるPhex遺伝子発現量を検討した。しかし、どの群においてもPhex遺伝子発現量は変化なく、今回の実験系に対するPhexの役割は低いものと考えられた。 また培養細胞を用いて、1α位水酸化酵素の遺伝子転写レベルに対する低リン刺激の影響も現在検討中である。
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