(1)糖尿病性腎症の発症に関する遺伝子の検索は、我々の基礎的研究で、その発症に活性酸素の核酸障害が関与しているという結果を基に、核酸の酸化的障害の除去を行う酵素をコードする遺伝子の多型性と糖尿病性腎症発症の関連性について検討した。中でも有意な結果が得られたのは8-oxoguanine DNA glysosylase(hOGG1)のSer326Cys多型で、この遺伝子多型は基礎的研究に於いて、Cys326はSer326に比較して核酸の酸化的障害の除去能が弱いことが知られている。7年以上の経過を有するII型糖尿病426症例で、糖尿病性腎症を発症した症例の遺伝子頻度は(CC : CS : SS=24% : 43% : 29%)で、腎症を発症しなかった症例の(CC : CS : SS=11% : 49% : 40%)であった。糖尿病性腎症を発症した症例では核酸の酸化的障害の除去能の劣るCを有意に高く持つ傾向にあることが示された(P<0.01)。また、ヒト腎生検での核酸の酸化的障害のマーカーである8-OHdGの蓄積も確認したが、同様の腎機能であるIgA腎症の腎生検組織ではほとんどその蓄積が確認されないのに対して、糖尿病性腎症では糸球体内皮細胞、上皮細胞、間質の血管内皮細胞に蓄積が観察され、高血糖状態に基づく核酸の酸化的障害と糖尿病性腎症発症の関連性が示され、International Society of Nephrology/American Society of Nephrology(San Francisco)にて発表した。 (2)IgA腎症の発症に関連する遺伝子検索は、近年6q22-3にIgA1の存在が報告された。我々の施設でも以前から、近親婚間に生まれたIgA腎症症例の連鎖解析を施行していたが、有意な結果を得るに至っていなかった。今回、同様の部位においてhomozygosity mappingを施行した。現在16症例の近親婚間に生まれたIgA腎症症例についての検討を行ったが、同様の座位で16症例中9症例がhomozygosityであり、さらに共通してhomozygosityであった座位は1cMまで絞り込むことが可能であり、その座位には既知の遺伝子であるlamininα2を含む3つの遺伝子の存在が確認されており、今後、これらの遺伝子を候補遺伝子として解析を行う予定としている。
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