研究概要 |
(目的)新生児期の脳機能の発達的変化を検討することは、新生児期における様々な病態の解明とその予防、治療法の確立、さらに予後判定に重要である。我々は近赤外光脳機能モニターを用い、光刺激での視覚野における反応の局在性を明らかとし脳機能評価に有用であることを既に報告した。今回は多チャンネル近赤外光測定装置を使用し正常成人と新生児例を対象に光刺激を行い、視覚野の反応の発達的差異について検討した。 (対象および方法)対象は正常成人男性3例と、新生児5例(修正在胎週数37-40週)。成人は座位で安静閉眼時、新生児は仰臥位で自然睡眠時に計測を行った。測定は多チャンネル近赤外光測定装置(OMM-2000,780,805,830nmの3波長,島津製作所製)を使用し、後頭部に後頭隆起を中心に24chのプローブ(投光受光部間距離mm)を装着した。刺激は8Hzのフラッシュ光を用いて、60秒毎に15秒間の刺激を5-10回行い、Hb02,Hb, totalHbの初期値よりの変動を、体動の影響の認めない記録時の加算平均値で評価した。全症例において両親または本人の承諾を得た上で検査を行った。 (結果および考案)全例において光刺激により1次視覚野と考えられる局所での反応を認めた。新生児においては、刺激時には脳血液量と考えられるtotalHbは一過性に増加し、刺激終了時には前値より低下し以後前値に回復した。Hb02はtotalHbと同様な変動を示したがtotalHbよりやや遅れて変動した。Hbは刺激時に一過性に減少し、刺激終了前より増加し刺激終了後も前値以上に上昇した。成人においては、刺激時にはtotalHbとHb02は一過性に増加し、刺激終了時に低下し以後前値に回復した。Hbは刺激時に増加したり、減少したりする変動を示した。以上の結果より、新生児の反応パターンは成人と異なっており、発達による反応の変化があると考えられた。しかし今後、覚醒状態の評価や反応個所の差異、他の脳機能モニターとの比較などの検討が必要と考えられた。
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