研究概要 |
A.臍帯血リンパ球に関する研究 臍帯血CD25^+CD4^+T細胞について解析した。CD25^+CD4^+T細胞はヒトおよびマウスにおいて抑制性機能を有する細胞として報告されているが、われわれは臍帯血CD25^+CD4^+T細胞も抑制能を有しているにもかかわらず細胞表面上ナイーブT細胞の表現型を示していることを明らかにした。本年度さらに同細胞の特性を明確にするために、胸腺分化の指標であるT cell receptor excision circles (TREC)のmRNA発現およびマウス抑制性CD25^+CD4^+T細胞に特異的に発現し、抑制機能に関与していると報告された2分子(glucocorticoid-induced tumor necrosis factor family-related(GITR) genesおよびFOXP3/Scurfin gene)についての臍帯血CD25^+CD4^+T細胞におけるmRNAの発現を調べた。TRECの発現は臍帯血膀帯血CD25^+CD4^+T細胞において、成人末梢血のCD25^+CD4^+T細胞やCD25^-CD4^+T細胞に比べ有意に高発現していた。このことは、臍帯血CD25^+CD4^+T細胞がTCRの再構成をした後ほとんど増加分裂していない、すなわちナイーブT細胞であることを直接的に示した。一方、CD25^+CD4^+T細胞におけるGITRの特異的な発現はみられなかった。このことから、臍帯血CD25陽性CD4陽性T細胞の抑制機能に対するGITR分子の関与は否定的であった。 B.血球・血管前駆細胞に関する研究 臍帯血CD34陽性細胞における血管内皮細胞への分化能を汎血球マーカーであるCD45分子陽性、陰性細胞間で比較した。血管内皮細胞へのin vitroでの誘導はフィブロネクチンコートしたプレート上にて増殖因子(VEGF,SCF,flt-3)添加によって行った。血管内皮細胞への分化が認められたのはCD45陰性細胞のみであった。この細胞群が血管内皮前駆細胞であるか浮遊している成熟血管内皮細胞であるかを結論づけるには至らなかったが、現在、より未熟な血管内皮前駆細胞はCD45陰性分画にあるとする報告が多いことから前駆細胞である可能性が十分示唆された。
|