研究概要 |
ヒト羊膜上皮細胞は胎生初期の外胚葉由来の細胞で、適切な培養下で神経系の細胞に分化することが知られている。ヒト羊膜由来細胞を神経細胞への分化を強く誘導する条件の培地で培養し、神経細胞への誘導分化を行い、自己複製能を有し、且つ、培養を続けると必ず神経細胞に分化することが運命づけられた神経細胞前駆細胞に当てはまる段階の細胞の存在を自己複製能と神経細胞のマーカーの発現との関係から検討した。 ヒト羊膜由来細胞より調製した細胞浮遊液をコートしていない培養皿を用い、OPTI-MEM^<TM>に5%胎仔牛血清、上皮細胞成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を添加した培地で培養を行った。培養開始2日後に、再び細胞を集め、浮遊液とし、コートしたガラス製カバースリップに適当量のせて培養した。培地は神経細胞への分化誘導作用を有するbFGF, all-trans retinoic acid (RA)などを添加した無血清培地を用いた。2日間から15日間の培養期間の後、細胞を固定し、nestin, microtubule associated protein2 (MAP-2)、glial fibrillary acidic protein (GFAP), galactocerebroside (Gal-C)の抗体を用い、間接蛍光抗体法を行った。各培養期間についてそれぞれのマーカーを示した細胞の割合について調べ、自己複製能についてはブロモデオキシウリジン(BrdU)の取り込みによって評価した。 培養2日目にはnestin陽性の細胞が出現し、培養5日目から8日目にかけてMAP-2陽性の神経細胞に分化したと考えられる細胞がみられた。自己複製能はMAP-2発現の前まで認められ、その維持にはEGF、bFGFが必要であった。また、RAは神経細胞への分化を促進した。
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