研究概要 |
ヒト羊膜上皮細胞は胎生初期の外胚葉由来の細胞で、適切な培養下で神経系の細胞に分化することが知られている。ヒト羊膜由来細胞を神経細胞への分化を強く誘導する条件の培地で培養し、神経細胞への誘導分化を行い、成ラットの脳の線条体、脳室周囲などに移植を行った。 ヒト羊膜由来細胞より調製した細胞浮遊液をコートしていない培養皿を用い、OPTI-MEM^<TM>に5%胎仔牛血清、上皮細胞成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を添加した培地で培養を行った。培養開始2日後に、再び細胞を集め、浮遊液とし、bFGF, all-trans retinoic acid (RA)などを添加した無血清培地を用いて、更に2日間培養後、定位脳手術装置を用いて8週齢ラットの脳に移植を行った。この時、羊膜由来細胞にはGFPが発現されるプラスミドを組み込んだ。移植後、1週、4週にラットを還流固定し、移植された細胞の動態を調べた。 4週目に至っても、生着した移植細胞はみられた。蛍光抗体法でGFAPの発現やMAP-2の発現がみられ、ダリア細胞や神経細胞に分化している細胞もみられたが、その割合は低かった。また、1週目と4週目に分化した細胞の割合や数に有意な差はみられなかったが、4週目は1週目に比べて移植された細胞が分散している傾向があった。更に、BrdUの取り込みから移植細胞の増殖能はほとんどみられなかった。今後、生着細胞の割合を増やし、高率に神経細胞に分化させる条件の検討を要すると考えられた。
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