Clara cell secretory protein(CCSP)は、気道の非繊毛上皮細胞から豊富に発現される蛋白で、その機能と動態は、完全には解明されていない。現在までの研究から、機能に関しては気道での抗炎症作用を持つことが示唆され、動態に関しては気道での炎症時に気道から血液中への漏出が増加するとともに発現量が抑制されることが示唆されている。 極低出生体重児の慢性肺疾患は気道での慢性炎症を病態の中心とする。この疾患におけるCCSPの動態を解明し、抗炎症作用を持つとされるCCSPの補充療法の可能性を探るのが本研究の最終的な目的である。 精製したrrCCSPの生化学的な性質がnative CCSPに近いものである事を確認するために、カルシウムイオン(以下Ca^<2+>)結合能を測定した。Ruthenium RedはCa^<2+>と結合する蛋白に結合し、多量のCa^<2+>により結合した蛋白から解離する。RrCCSPは、Ruthenium Redとの結合能、Ca^<2+>を加えたときのRuthenium Redの解離曲線、ともに以前にマウスのnative CCSPで報告されている値に近似した値が得られた。 精製したrrCCSPを、ウサギとギニアピッグに繰返し注射する事で、二種類の抗CCSP抗体を得た。これらの抗体を用いて、マウスの肺ホモジェネートと気管支肺胞洗浄液を用いたWestern blot analysis、マウスの肺組織を用いた免疫組織染色を行った。どちらの抗体も、Western blot analysis・免疫組織染色ともにnative CCSPに対し、良好な感度・特異性を示した。 二種類の抗CCSP抗体を用いて、ELISAシステムを確立し、マウスの気管支肺胞洗浄液中のCCSP濃度の測定を試みた。サンドイッチELISA法、間接ELISA法の二種類を試み、ウサギ抗rrCCSP抗体を用いた間接ELISA法による測定が、最も適していると判明した。
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