研究課題
奨励研究(A)
本研究では、染色体転座により器官形成異常および成長障害を起こすチャイニーズハムスター(CH)系統(t(2;4)(p23;q19))の、転座組換え点において変異を起こした遺伝子(群)を、ゲノム情報を利用したポジショナルクローニングにより同定することを目的とする。その戦略として、まず詳細な比較遺伝子地図を作製した。その結果、約20個の遺伝子の染色体マッピングから、チャイニーズハムスター2p23はマウス15番染色体、ヒト5番染色体に対応し、成長ホルモン受容体遺伝子(GHR)以外にも、先天的なヒトの発達障害の原因遺伝子が存在することが明らかにされた。サザンブロットとFISHの結果から、このGHR遺伝子自身が組換え点になっていることは否定されたので、GHR遺伝子発現異常は転座により引き起こされているが、組換え点には成長ホルモンに関連する因子の遺伝子が存在することが予想された。この未知の遺伝子を同定するために、チャイニーズハムスターのゲノム全領域をカバーする、平均インサートサイズ100kbpのゲノムDNAで構成されたBAC libraryを慶応大学医学部と共同研究で作成した。このライブラリーでは約3万個のクローンでチャイニーズハムスターのゲノム1個分をカバーできるが、10万個、すなわち、3〜4ゲノム分をカバーすることをめざしている。これらのクローンは順次、DNAアレイとして、今回調べた相互転座以外でも迅速に転座、もしくは染色体(遺伝子)の欠失、増幅をスクリーニングするツールとするべくチャイニーズハムスターDNAバンクとして保存している。
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