(1)p120βがアンドロゲンレセプター(AR)に特異的なコアクチベーターであることをGST結合実験を用いて確立した。AR側はリガンド結合部位及びAF-2領域を含むC-terminus領域であり、p120β側はLXXLLモチーフ領域は結合に必要ではなく、C-terminus側のグルタミンが豊富な部位がARとの結合に重要であり、また両者の結合はアンドロゲンに依存的であった。 (2)治療前の前立腺癌2例と前立腺肥大2例の組織におけるp120αとβの発現をRT-PCR法で比較検討した。前立腺癌においては2例ともp120の発現が全体的に減少していたが、β優位であり、また前立腺肥大では正常前立腺組織と同じ発現(β優位)であった。ARはどの組織でも発現していた。 (3)前立腺癌細胞PC3細胞とLNCap細胞におけるp120の発現を検討した。アンドロゲン非依存性であるPC3細胞ではα優位であり、アンドロゲン依存性であるLNCap細胞では正常前立腺組織と同じにb優位であった。またアンドロゲンを添加して48時間後ではこの発現に変化は認められなかった。 (4)他の組織由来の癌細胞、HepG2(肝細胞癌)、SQ5(肺癌)、COLO205(大腸癌)、Hela(子宮頚癌)におけるp120の発現を検討した。すべての細胞で正常組織と同じにα優位であった。 平成13年度は以上の結果を得た。アンドロゲン感受性が高いとp120βの発現比率が高くなることより、p120が前立腺癌のアンドロゲン不応性に深く関与している可能性が示唆された。現在はp120αとβの機能的な差が前立腺において認められるかを検討中である。
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