研究概要 |
核内受容体コアクチベーターp120αをクローニングし、そのスプライシングバリアントであるp120βがアンドロゲン受容体の特異的コアクチベーターであることを細胞内遺伝子導入法により機能的に、またGST結合実験により形態的に証明してきた。平成14年度はアンドロゲン感受性組織である前立腺疾患におけるp120αとβの発現と機能を解析した。 <方法>針生検により得られた前立腺癌組織未知療10例:平均年齢71.8歳(高分化3例、中分化6例、低分化1例)、治療後再発例3例:平均年齢70.7歳(中分化1例、低分化2例)、及び外科的切除による前立腺肥大組織2例:平均年齢70歳のp120α,βの発現をRT-PCR法により検討した。またアンドロゲン感受性とp120βの発現の関連性を解析するため、ヒト前立腺癌培養細胞を同様の方法で検討した。p120βの前立腺癌におけるアンドロゲン特異的機能を遺伝子導入法で検討した。 (結果)1.正常前立腺組織ではp120β/α比は1.56、前立腺肥大症組織は1.56と同等であった。しかし、未治療の前立腺癌組織では7〜20と非常に強いβ優位の発現を認めたが、治療後再発例では0.8とβの優位性は消失していた。2.アンドロゲン応答性LNCap細胞ではその比は2.3とβ優位であり、アンドロゲン不応性のPC-3細胞、DU145細胞は0.2、0.5とα優位であった。3.PC-3細胞において、p120βは正常アンドロゲン受容体と同時に遺伝子導入すると強いアンドロゲン依存性を示した。 (結論)未治療の前立腺癌ではp120βの強い発現優位を認め、再発前立腺癌ではp120βの優位性が消失していた。また他のリガンド共存下においてもp120βはアンドロゲン特異性を維持していた。従ってp120βは前立腺癌のアンドロゲン依存性の増殖に関与していることが示唆され、前立腺癌のマーカーに応用できる可能性が考えられた。
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