近年、アルドステロン受容体拮抗剤であるスピロノラクトンが慢性うっ血性心不全患者の死亡リスクを約30%も低下させることが明らかになり、アルドステロンの直接的な心血管障害作用が注目されている。アルドステロンは循環血液量の調節機構としての間接的な作用を有する以外に直接的に心筋の肥大・繊維化などを惹起することが現象として知られている。実際、アルドステロン合成酵素の遺伝子であるCYP11B2はその遺伝子多型解析の結果、左室心筋重量を規定する遺伝子でもある。しかしながらアルドステロンの直接的な心血管障害作用機構として知られているのは畠山らが明らかにした血管壁レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系を介したもの以外は不明な点が多く、その作用機構の解明が大きな課題となっていた。そこで平成13年度は、近年開発されたAtlas cDNA Expression Array (CLONTECH社)を用いて、心臓、血管に関する細胞のシグナル伝達機構、構造、輸送機能、代謝などに関連する既知の588種類の遺伝子の中で、いかなる遺伝子群をアルトスチロンが発現調節しているかをヒト大動脈平滑筋細胞を用いてまず検討した。その結果、アルドステロンは動脈硬化の初期形成に重要な意義を有する接着因子(VCAM-1)の発現調節に関与していることが明らかになった。
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